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■豆知識 |
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◎ネフローゼ症候群の治療反応による分類
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・ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群:十分量のステロイドのみで治療して
1 カ月後の判定で完全寛解または不完全寛解T型に至らない場合とする。
・難治性ネフローゼ症候群:ステロイドと免疫抑制薬を含む種々の治療を 6
カ月行っても,完全寛解または不完全寛解T型に至らない場合とする。
・ステロイド依存性ネフローゼ症候群:ステロイドを減量または中止後再発を
2 回以上繰り返すため,ステロイドを中止できない場合とする。
・頻回再発型ネフローゼ症候群:6 カ月間に 2 回以上再発する場合とする。
・長期治療依存型ネフローゼ症候群:2 年間以上継続してステロイド,免疫抑制薬等で治療されている場合とする。(平成
22 年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害に関する調査研究班)
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◎ネフローゼ症候群患者の食事
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尿中に1日に数グラムから十数グラムものタンパクが漏れ出るため、血液中の蛋白も減ります。これに対しては適切な量のタンパクをとります。しかし、腎機能が低下して血液中の尿素が増加している場合は、ある程度の制限が必要です。この場合を除き、具体的に微小変化型ネフローゼ以外では、1日、体重1キロあたり0.8グラム、治療反応性良好な微小変化型ネフローゼでは1.0〜1.1グラムのタンパク食とします。
食塩は取りすぎると浮腫みが増えるので、これを制限する必要があります。その程度は一日に3〜7グラムといろいろで、浮腫みの状態に応じて決めます。高血圧を伴う場合にも食塩制限をします。
炭水化物と脂肪は、特に制限の必要はありません。適当量をとって食事全体のカロリーを2,000キロカロリー前後に保つようにすべきです。(飯田喜俊『腎炎・ネフローゼ症候群の正しい知識』南江堂より転載)
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◎尿のチェック
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尿については、尿量、回数、尿の色、泡が立ちやすいか(蛋白が多い時に見られます)などに気をつけると、病状の変化を早く発見できます。たとえば、ネフローゼでむくんできた時には尿量が減りますし、慢性腎炎で腎機能が低下すると一時尿量が増えたり、夜間の尿回数が多くなることがあります。
尿の色では、尿に血液が多く混じると赤色〜紅茶色になります。しかし、PSP試験の後や下剤を服用した際に尿がピンク色〜赤色となることがありますが、これは心配要りません。(飯田喜俊『腎炎・ネフローゼ症候群の正しい知識』南江堂より転載)
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◎尿の生成と排泄
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腎臓の主な役割は尿を作って排泄することです。その働きの基本となる単位がネフロンとよばれるもので、糸球体と尿細管からなっています。ネフロンは1つの腎臓に約100万個あります。
糸球体は大動脈から腎動脈に分かれた動脈が次第に枝分かれし、最後に毛細血管となって毛糸の球のようになったもので、ここで血液がろ過されます。尿細管では、そのろ液(原尿)から必要な物質を再吸収したり、糸球体を出て尿細管の回りを循環している血管網から尿細管内のろ液の中へ不要な物質を排泄したりしています。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎ネフローゼ蛋白尿
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1日尿蛋白排泄量が3.5g以上の蛋白尿であり、この範囲の蛋白尿は通常、糸球体起源であり、蛋白尿の主体はアルブミンである。蛋白は糸球体毛細血管壁のサイズバリアとチャージバリアの障害により出現する。
糸球体ろ過率(GFR)が低下したり、低アルブミン血症の程度が強いと、蛋白排泄量の低下が見られることはしばしば経験することである。(『腎機能検査の正しい評価』より転載)
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◎水分の取り方
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わたしたちの体を維持するには1日1,200ml程度の水分が必要です。その内訳は、料理の中に含まれている水分が約600ml、お茶や飲み物、味噌汁などの水分が残りの600mlです。
腎臓病ではあまり水分は取らない方がよいと思っている人が多いようですが、水分の制限が必要なのは、尿量が1日400ml以下の乏尿の時や、ネフローゼ症候群で浮腫みがひどくて胸水、腹水がたまっている時などです。また、透析療法を受けている患者さんも、水分が制限されます。
病気の程度によって1日にとる水分の量は決まりますが、この時、1日にとった水分の量と出た尿量の測定や、体重の測定をしておかなければなりません。急性腎炎や急性腎不全などで尿が少ない場合には、1日前の尿量と同じ量の水分プラス500mlくらいが飲んでもよい水の量となります。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎血中たんぱくの検査
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ネフローゼ症候群では、尿の中にもアルブミンというたんぱくが大量に出てくるため、血液中の総たんぱくは6g/dl以下となり、アルブミンも3g/dl以下と著しく減ります。
また、血清のたんぱくで、α?−マクログロブリンやβ―リポたんぱくが増えていることが分かります。ネフローゼ症候群では、γ―グロブリン分画のうち、とくにIgG、IgAが減り、IgEは増えます。IgA腎症や紫斑病性腎炎では、血清のIgAの増加が患者さんの約半数に見られます。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎血中コレステロールと中性脂肪
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ネフローゼ症候群では、高脂質血症が見られ、血清中の総コレステロール(TC)、リン脂質、中性脂肪(トリグリセリド=TG)などが増えてきます。
高コレステロール血症は、肝臓で作られるコレステロールの量が増えているだけではなく、コレステロールの胆汁酸への化学的な分解が障害されるために起こると考えられています。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎浮腫とは
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身体の水分量は成人で全体重の約60%で、そのうち3/4が細胞内液で、残り1/4が細部外液である。細胞外液はさらに血漿内水分(体重の約5%)と組織間液(同約10%)とに分けられる。
浮腫とは、これらのうちの組織間液が病的に増加していることを意味する。特殊な組織間腔における水分の貯留として胸水や腹水があるが、一般的に浮腫と呼ばれているのは皮下浮腫のことである。
浮腫の存在の確認は、体重が5%以上増加している場合で、それ以下の場合には体重増加として認められ、潜在性浮腫と呼ばれている。(酒井紀『ネフローゼ症候群Q&A』医薬ジャーナル社より転載)
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◎たんぱく尿とは
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たんぱく尿とは、尿の中にたんぱく(主にアルブミン)が出る状態を言います。健康な人でも少量のたんぱくが尿に出ますが、普通のたんぱく定性検査法では検出されない程度のもので、その上限は、1日100〜150mgです。
たんぱく尿は、生理的たんぱく尿と病的たんぱく尿とに分けられます。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎血尿とは
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血尿とは尿の中に赤血球が出ている状態で、目で見て明らかに血尿と分かる肉眼的血尿と、見た目には全く分からない顕微鏡的血尿とがあります。
肉眼的血尿は尿1リットルの中に血液1ミリリットル以上がまじっているもので、顕微鏡的血尿は遠心分離で集めた尿沈渣を顕微鏡の強拡大視野(400倍)で見た時、5個以上の赤血球を認めるものを言います。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎尿検査
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尿検査には尿蛋白、尿糖、尿潜血反応、pH、比重、亜硝酸塩などの尿定性試験があります。これらは尿試験紙を用いて行うのが普通です。
ついで、尿蛋白や尿糖、ナトリウム、カリウム、クロール(塩素)、尿酸、クレアチン、クレアチニン、β?−ミクログロブリン、NAG活性などを調べる定量試験があります。定量試験には、外来や早朝の第一尿のみならず、24時間(1日)に出た全ての尿が用いられます。
尿の中には色々な固形成分が含まれています。そこで、これらを調べるために新鮮な尿10ml.を1500回転・5分間、遠心分離器にかけ、尿沈渣と呼ばれる沈でん成分を集めます。尿沈渣の中には、病気によって赤血球、白血球、上皮細胞、結晶、細菌、円柱状の物質などが見つかります。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎血液検査
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血液検査では、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、血中β?−ミクログロブリン、尿酸の値を検査し、腎臓の働きをチェックします。
また、血清総蛋白(アルブミン)、コレステロール、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM、IgE)と補体(CH50、CH3、CH4)などを測定します。そのほかに、病気の種類を確かめるために、末梢血(赤血球、白血球=リンパ球)、血糖、ヘモグロビンA?cなどを調べることもあります。
その他 腎臓の働きを見る検査として、糸球体ろ過量、PSP排泄検査、フィシュバーグ濃縮試験などがあります。(冨野康日己『腎臓病の正しい知識』保健同人社より転載)
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◎腎臓はどのようなものか
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腎臓は脊椎の左右に1個ずつあり、約10〜12cmの大きさでソラ豆の形をしています。腎臓の内部は皮質と髄質に分けられます。皮質には糸球体や尿細管などが集まっており、髄質には尿細管や血管などが集まっています。
腎臓の内部を見ると、腎臓の機能上の単位であるネフロンが左右の腎臓に約100万個ずつはいっています。ネフロンとは毛細血管が糸だまのようになった糸球体から始まり、尿細管というくねくねと曲がった細い管につながり、さらに腎臓の出口に向かって集合管となるまでの部分をいいます。
糸球体で水分とか分子の小さいものが濾過され(原尿)、それが尿細管の中を通っていくうちに、次第に内容が変えられて尿が作られるのです。(飯田喜俊『腎炎・ネフローゼ症候群の正しい知識』南江堂より転載)
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◎腎臓の働きはどのようなものか
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◇老廃物の除去:新陳代謝の終末産物として蛋白質から尿素、尿酸、リン酸、硫酸などが作られますが、これらが体内にたまるといろいろの症状が出ます。腎臓はこれらを排泄する作用があります。腎不全になると体内に尿素などがたまり、尿毒症状の原因となります。
◇水分と塩分の調節:体の中の約60%が水分ですが、この中にはナトリウム、カリウムなどが溶けており、健康な人ではほぼ一定の濃度と量が保たれています。ところが、もしこれらが多すぎたり少なすぎたりすると、腎臓の働きにより多すぎる場合にはその分を排泄させ、少なすぎる場合には排泄を極力抑えて、体内の水分や塩分などを一定にしています。
◇血圧の調節:腎臓は血圧の調節にも大切な役割を果たしています。もし血圧が下がると、腎臓からレニンという酵素が出て、血圧を上げる作用が働きます。また腎臓ではプロスタグランデインというホルモンが作られて、血圧を下げる働きをします。
◇赤血球の生成:腎臓では赤血球の生成を促すエリスロポエチンというホルモンが作られていますが、エリスロポエチンが骨髄に働いて赤血球の生成を促します。
◇ビタミンDの活性化。(飯田喜俊『腎炎・ネフローゼ症候群の正しい知識』南江堂より転載)
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◎たんぱく尿
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たんぱく質は、体にとって必要なものです。したがって、おしっこの中のたんぱく質は、本来ろ過されて排泄されることはなく、排泄された場合でも1日総たんばくとして40〜80mg、アルブミンで30mg/日以下程度です(尿中のたんぱく質のうち約40%はアルブミンと言われています)。
ところが、排泄されないはずのたんぱく質が、おしっこの中にたくさんもれ出てしまうことがあります。これは、血液をろ過する腎臓の糸球体の目があらくなるなど、腎臓の機能が低下していることが考えられます。
ただし、健康でもたんぱく尿が出ることがあります。たとえば、激しい運動をした後や、高熱が出たときなどに、−時的にたんぱく尿になる場合があります。
たんばく尿を放っておくと、血中のたんぱく質は減っていきます。実は血中のたんぱく質には、水分を血管内に引きとめておく力があります。ところが、血中たんぱく質が足りない人は、水分が血管外に出てしまい、むくみを起こすことになります。
このため、糸球体が障害されて起こるネフローゼ症候群では、たんぱく尿の他に、低たんぱく血症、むくみなどの症状を伴うことになります。(日本腎臓学会『おしっこ大辞典』より転載)
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◎年齢別にみたネフローゼ症候群の特徴
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ネフローゼ症候群は発症年齢によって、その原因疾患や組織病型が著しく異なっている。小児期は微小変化型ネフローゼの発症頻度が圧倒的に高く、思春期から成人期は膜性増殖性腎炎、次いで増殖性腎炎が増加する。中高年齢になると膜性腎症が著しく増加して半数以上を占めるようになる。
また、続発性ネフローゼ症候群としては、小児期は紫斑病性腎炎、次いでループス腎炎が多くなり、40歳以上では糖尿病に由来するものが増加する(医薬ジャーナル社『ネフローゼ症候群Q&A』より)
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◎成人ネフローゼ症候群の診断基準
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1、尿蛋白:1日の尿蛋白量は3.5g以上を持続する。
2、低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0g/100ml以下。低アルブミン血症とした場合は、血清アルブミン量3.0g/100ml以下。
3、高脂血症:血清総コレステロール値250mg/100ml以上。
4、浮腫:あり
注:1)蛋白尿、低蛋白血症(低アルブミン血症)は、本症候群診断のための必須条件である。2)高脂血症、浮腫は本症候群診断のための必須条件ではない。3)尿沈渣中多数の卵円形脂肪体、重屈折脂肪体の検出は、本症候群の診断の参考となる。
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◎小児ネフローゼ症候群の診断基準
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1、尿蛋白:3.5g/日ないし0.1g/kg/日、または早朝起床時第一尿で300mg/100ml以上の尿蛋白を持続する。
2、低蛋白血症:血清総蛋白量として学童、幼児6.0g/100ml以下、乳児5.5g/100ml以下。血清アルブミンとして学童、幼児3.0g/100ml以下、乳児2.5g/100ml以下。
3、高脂血症:血清総コレステロール値として学童250mg/100ml以上、幼児220mg/100ml以上、乳児200mg/100ml以上。
4、浮腫:あり
注:1)蛋白尿、低蛋白血症(低アルブミン血症)は、本症候群診断のための必須条件である。2)高脂血症、浮腫は本症候群診断のための必須条件ではないが、これを認めればその診断はより確実となる。3)蛋白尿の持続とは3〜5日以上をいう。(厚生省特定疾患ネフローゼ症候群調査研究班)
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