腎炎・ネフローゼ症候群の治療について (1/3)




一、はじめに

 急性腎炎、慢性腎炎及びネフローゼ症候群は幼児期によく見られる腎臓疾患である。これらの疾患はなかなか治らなくて、再発も多く、中には腎不全に進んだり腎機能衰弱で尿毒症になって命を落とすケースも少なくない。

 西洋医学は腎炎・ネフローゼ症候群の診断にすぐれており、とりわけ電子顕微鏡を診断に使うようになってから、的確な病理診断も可能になった。しかし治療においては、西洋医学は根本的な治療法が確立しておらず、対症療法しかないのが現状である。

 筆者は長年腎疾患に対する漢方治療を行っており、茲に幾つかの臨床体得を報告する。また、隣国日本にいながら、筆者の治療を受けている患者たちのことも合わせて紹介したい。

二、肺脾腎機能の失調が病因

 漢方医学は、腎炎・ネフローゼ症候群を「水腫」としてとらえ、肺・脾・腎機能の失調によるものと認識している。具体的には急性腎炎の初期では、水道の通調を主る肺の機能が異常と見て、宣肺利水を行う。急性腎炎の中期及びネフローゼ症候群の初期では、脾の運化水湿の機能失調が原因と考え、健脾利湿を行う。慢性腎炎及びネフローゼ症候群の後期は大体腎陽虚衰、水湿不化となり、治療は主として腎陽の温補、利水消腫をする。

 漢方医学の弁証治療で、体自身の治癒能力を高め、腎炎・ネフローゼ症候群等の腎疾患を根本から治すことができる。しかし尿蛋白、水腫等の症状を短期間のうちに抑える意味では、漢方薬よりも、ステロイド剤等の西洋薬の方がより効果的である。筆者が使っている治療方法は西洋薬で病状を抑え、その間に漢方薬で体自身の治癒能力を高める。漢方薬の効果が現れてから、西洋薬をまず用量から減らし、そして種類を完全に停止するまでに順次減らしていく。こうした西洋薬との併用によって、漢方薬の薬効が現れるまでの間に、病気の再発を避けることができる。

三、腎康丸の目的は扶正固本

 腎炎・ネフローゼ症候群を治すのに相当時間がかかることから、筆者が臨床治療の中で考案したのは「腎康丸」(T、U)という処方である。この処方をベースに、患者の具体的症状等に合わせて、薬味及び分量を加減して、投与している。

 腎康丸(T)はネフローゼ症候群治療に使うもので、茯苓、生よく仁、黄ぎ、山薬、枳殻、党参、知母等16の生薬から構成される。本方の作用は健脾補気、利湿消腫、尿蛋白をなくすことである。