『東洋医学』一九九八年十一月号に筆者が「腎炎・ネフローゼ症候群の治療について」という文章を発表している。その中で、筆者の治療を受けている日本のレインボー会(代表:吉田将介さん。東京)の会員たちのことにも触れていた。今回はレインボー会会員の治療状況を中心に報告する。なお、前回使用したデーターは一九九七年八月から一九九八年八月までのもので、今回使用したのは一九九七年八月から一九九九年六月までのものである。
一、治療の方法
ネフローゼ症候群は西洋薬のステロイド剤を使えば、簡単に抑えることができる。しかし根治することができない。そして同剤を長期的に使用すれば様々な副作用がもたらされる。ネフローゼ症候群は漢方医学では「水腫」病の範疇に属し、治療としては、「扶正固本」、「健脾補腎」、「清湿消腫」、「固摂精微」を原則とする。
筆者は長い間腎臓系疾病の治療に当たっており、上記の漢方治療原則に基づいて、「腎康丸」というネフローゼ症候群治療の処方を考案した。腎康丸は茯苓、黄ぎ、山薬、枳殻、党参、知母等16の生薬で構成する。一クールは三ヶ月である。今回報告するレインボー会の患者たちに行った治療では全て腎康丸を使用している。
治療と観察は次の四段階に分けて行う。<第一段階>腎康丸と西洋薬を併用する。<第二段階>腎康丸を服用しながら、ステロイド等の西洋薬の用量をそして種類を順次減らしていく。<第三段階>腎康丸のみを服用する。<第四段階>全ての薬を止め、あらゆる治療を停止して、二年間観察する。如何なる異常もないと確認できれば、治癒したと見なす。
二、治療の途中結果
一九九七年八月から一九九九年六月までの間に腎康丸の適応症と診断し、治療を行ったレインボー会のネフローゼ症候群患者が計五十四名いた。ただ、この中には途中で中断した二名が含まれており、二名とも腎康丸を二クール服用した後に中断したもので、一名については情報が全くなく、もう一名については、レインボー会から、その後、再発していなくて、治ったようだという情報が来ているが、筆者が直接確認していない。したがって、今回は五十四名の中から上記二名を除外して、五十二名についてまとめた。
この五十二名の内訳は男性三十三名、女性十九名で、最年少は三歳、最年長は六十七歳である。この中で早い人は九七年八月から筆者の治療を受けており、遅い人は今月に受療を始めたばかりである。
