小児糸球体腎炎治療の症例報告 (1/3)


                                           
急性糸球体腎炎

 黄○○、女性、12歳

 [主訴]1週間以来の浮腫、乏尿。
 [現病歴]患者は3週間前に風邪で熱を出し、扁桃腺も腫れたため、ペニシリン注射による治療を受け、取りあえずは好転した。しかし、1週間前に眼瞼の浮腫が始まり、乏尿、血尿も現れた。尿検査の結果からも異常が認められたため、急性腎炎として入院した。

 [現症]栄養状態はまずまずで、元気がない、顔・眼瞼及び両側下肢に軽度の浮腫があり、血圧:140/90mmHg、咽部が赤くて、扁桃腺が腫れている。舌が赤く、苔が薄くて黄色い。脈浮数。尿検査では蛋白:++、赤血球/満視野。

 [治療と経過]本症例は風熱型の風水・肺気不宣と診て、清熱・疏風・宣肺・利水の方法で治療にあたった。
 処方: 銀花、連翹、荊芥、桔梗、丹皮、黄ごん各10g、茯苓25g、沢瀉、猪苓各15g、甘草10g 右の処方を5服服用するように指示した。

 二診:右記の薬を服用した後、病状が緩和され、浮腫も大半消えた。尿量も増え、尿の色も以前より薄くなった。尿蛋白:+、赤血球:8〜10/強拡大視野、血圧:110/70mmHgになった。前回の処方に生地10gを加えてさらに10服投与した。

 三診:浮腫が完全に消え、尿の量、色とも正常になり、尿蛋白:−、赤血球:2〜3/強拡大視野、血圧:100/60mmHg、効果を固めるために前回と同じ処方でさらに5服服用するように指示した。

 3ヶ月後に再検査を行ったが、全て正常で既に学生生活に戻っていた。

 [考案]この患者は典型的な糸球体腎炎である。発症前に上気道感染の病史があって、そして2週間後に浮腫、乏尿、血尿、尿蛋白、高血圧などの急性腎炎の症状が現れた。筆者は本症例が発病して経過した時間が短くて、表症及び舌赤、苔黄、脈浮数を伴っていることから、風熱型の風水と漢方弁証し、清熱・宣肺・利水・消腫の治療を行った。

 邪熱の消去と水道を通調する肺の機能の回復に伴い、浮腫、乏尿などの症状が段々消えたのである。発病後迅速な治療ができたため、わずか20服の薬服用で完治できたのである。本病は早期治療が極めて大切である。