腎康丸による紫斑病性腎炎の治療 (1/3)


                                       

 紫斑病性腎炎はアレルギー性紫斑病に合併する糸球体腎炎で、小児に多く見られる病気です。小児の続発性腎炎の中で、紫斑病性腎炎が最も多く見られます。

 アレルギー性紫斑病患者の30〜80%は発症する前に上気道感染の病歴があります。感染によって体が過敏状態になっており、その時に、何かの物質に対し過敏に反応することで、アレルギー性紫斑病が引き起こされると考えられています。アレルギー性紫斑病の主な臨床症状は皮膚の出血斑、腹痛、関節痛です。

 合併症である腎炎の症状は通常紫斑が生じてから2〜4週の間に現れます。腎炎の主な症状は血尿、蛋白尿です。血尿と蛋白尿は一緒に現れるケースもあれば、血尿または蛋白尿の片方しか現れないケースもあります。浮腫、乏尿等の症状が伴われることもあります。

 私は長い間紫斑病性腎炎を治療する中で、漢方医学の理論に基づいて腎康丸(U)という処方を考案しました。これは全て生薬で構成されるもので、内臓機能及び体質の改善を通じて、本病の治癒をはかるためのものです。

 治療では、通常腎康丸を2クール(1クールは3ヶ月)程度服用することで、尿蛋白、血尿が消失し、紫斑病性腎炎は基本的に改善され、さらに1クール服用すれば治癒がはかれます。しかし反復の多い重症腎炎の場合、腎康丸を3〜4クール或いはもう少し長く投与するケースもあります。

 紫斑病性腎炎は反復が多く、遷延しやすいため、慢性腎炎、腎不全、尿毒症に進行するケースも少なくないです。従って早期に積極的に治療することが必要です。 


腎康丸による紫斑病性腎炎の治療症例

<症例一>
 王○、男、9歳。
 半年ほど前に風邪を引き、その後、腹痛、関節痛、さらに紫斑が相次いで現れた。紫斑が生じてから三週間後の尿検査で蛋白尿と潜血を指摘され、現地病院で紫斑病性腎炎と診断された。

 現地での治療はステロイドによるものであった。この治療で紫斑が消え、腹痛も治まった。関節痛も大分緩和された。しかし、尿蛋白、潜血は改善されなかった。

 患者が両親に連れられて、筆者のところを訪れてきた時、尿蛋白は(++)、潜血(++)、脈は数で、舌苔は白であった。